2010年03月31日


毎年恒例。みなさんに卒業式祝辞のお裾分け。
今年は故手塚治虫先生の「雨降り小僧」のお話を紹介することにしました。


むかし昔、山の中の田舎の小さな小学校に“もー太君”て子がいました。
もー太くん、あんまり友達もいなくていつもひとりで遊んでいました。
あるとき、川原の橋の下で不思議な子供と出逢いました。
その子は、古くさい服を着て、むか〜しの“簑”をかぶっていました。傘が無かった頃、雨よけのために、藁で作った(こ〜んな)三角のやつ。
「おめえ、変な格好してるなぁ、どっから来たんだ?それに・・」
なんとその子の頭の上だけ雨が降っていました。
「なんでおめぇのとこだけ雨が降ってんだ??」


「オラ“雨降り小僧だ”妖怪なんだ」

ふたりはそれから友達になって、毎日一緒に遊びました。

ある日、もー太くん、長靴を買ってもらいました。
むか〜し昔の話です。
長靴なんてそりゃ高級でめったに買ってもらえない時代です。

「いいな〜、もー太。おいらにその長靴おくれ!」

「や・やだよ。」

雨降り小僧は、きたないゾウリをはいていて、ましてやいつもそこだけ雨がふってるから、足は泥でドロドロなんです。

「ちょうだい。おいらにおくれよ。」

「やだったら!やだよ。」

「・・・そしたらさ、もー太。もー太の“願い”を三つ叶えるからさ。そしたらくれるか?おいら妖怪だから、少しくらいなら不思議な力を持ってるんだ」

「う〜ん。願いか・・・。わかった。3つの願いだね。叶えてくれたらこの長靴あげるよ。約束する。」

「やった!!約束だど。」
雨降り小僧は飛び上がって喜びました。

それから何日か後、もー太くんはガキ大将達にいじめられてました。
「雨降り小僧!ひとつめの願いだ!助けておくれ!」
「おやすいご用だ!」
雨降り小僧は大雨と雷を鳴らしてガキ大将たちを退散させました。


またある日、もー太くんはせっかく捕った自慢のカブトムシを、ガキ大将達に取り上げられました。
「雨降り小僧!悔しいから、もっと珍しいものをちょうだい」
雨降り小僧は、もー太をあずき洗いのじじいの所に連れて行き、七色に輝く亀をもらいました。

そして三つめの願いをする時がきました。

その日、学校が火事になってしまったのです。
みんな大慌てです。
「雨降り小僧!大雨をふらして火を消してくれ!」
「や・やだよ!おいらの簑には水よけの油が塗ってあるんだ。火がついたら死んじまうよ!」
「最後のお願いだよ。これを叶えてくれたら長靴あげるから」

どうしても長靴が欲しい雨降り小僧は、大雨を降らし、体に火がつきながらも命からがら火事を消しました。
「アチチチ!火事、消したど!約束の長靴、持ってきておくれよ!いつもの橋の下で待ってるから!アチチチ!」
雨降り小僧は飛んでいきました。

しかし翌日、もー太くん家のお引っ越しでした。町に引っ越すので、もー太くんは大喜びではしゃぎました。

約束を忘れて・・・

そしてもー太くんは中学に入り、高校にはいり、大学に進学し、社会人になりました。
結婚もし、子供もでき、自分は頑張って会社の社長さんになりました。そのうち、孫もできて・・

ある日、孫の手をひき町を歩いていると、店頭に長靴が並んでいました。
「おじいちゃん、長靴がほしい!」
「いいとも。なんでも買ってやるさ。うん。・・・・・・??」

「ああっ!!!ああ〜っ!!」

もー太おじいちゃんは思い出したのです。

ずーっと、遥か昔のことを。

「ああー!!忘れていた!!」

もー太は大急ぎで長靴を買い、汽車に飛び乗り、ふるさとへ向かいました。

「あいつ、いるかな・・まってるかな・・」

故郷がみえてきました。でも、あれから50年近くが経っています。ビルも建ち、街並みも変わっています。
もー太おじいちゃんは、転がるように駅に降り、息を切らして“約束”の橋の下に向かいました。

橋はコンクリートに変わっていたけれど、間違いなくこの場所です。
土手を転がるように駆け下りました。

橋の下には


うすーく透けてはいるけれど、あいつ、がいました。
雨降り小僧が、あの頃のままの雨降り小僧がいました。

「すまなかったすまなかったすまなかった!待たせてすまなかった。ごめんよ雨降り小僧。」

もー太は雨降り小僧に長靴を渡しました。

「ありがとう・・」

「おまえ、すっと待っていたのか?」

「うん、もー太がきっと来ると思っていたから。」

「すまなかった。でも雨降り小僧。どうしたんだい?姿が透けて消えそうじゃないか。」

「うん、それはきっと、もー太が大人になったからだろう。
でも、間に合ってよかった。」

雨降り小僧は、長靴を大事そうに抱きしめて、

そして消えていきました。

「待ってくれ雨降り小僧、消えないでくれ!もっと話がしたいんだ。待たせたお詫びがしたいんだ。待ってくれ、雨降り小僧!」

もー太は誰もいなくなった河原でひとり泣きじゃくりました。

おわり

子供の時にたくさんあって、大人になるにつれて少なくなるもの。
人生に残された時間。
他に何があるかな?
夢、希望、勇気・・?
どうだろう。
時間は確実に減ってゆくけれど、夢や希望は無くなると思いますか?
私はこう考えます。
そこに変わらずあるのに、見えなくなっているだけなんだと。
大人になるにつれ、様々な世界が広がります。
残念なことに、世の中は正しいことばかりではない。
くだらない情報や、時代の嘘に、君たちのその心を、どうか、曇らせぬよう。
大切なものを見失わない、正しい目を持ち続けてください。

夢とは信じること
勇気とは信じること
強さとは信じること

夢も勇気も強さも自分で手に入れてゆくものであること。

君たちは夢を叶えるためにこの世に生まれてきたのです。それを忘れないでください。
同じ時代に生まれ、巡り会った素晴らしい友たち。これから出会う素晴らしい友たちのため、共に泣き、共に喜べる、そんな人になってください。これから君たちと出会うのを心待ちにしている人が沢山いる。だから、絶対に自分で命を絶ったりしてはいけない。どんなことがあっても生き抜きなさい。そうでなければ、いつか君と出会う運命の人が路頭に迷ってしまうではないか。君たちは決して独りではないのですよ。
本日をもって、この学び屋を旅立ってゆく君たちに、心からの祝福を贈ります。
卒業おめでとう。
posted by 石川雄規 at 23:41 | 日記
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