2014年03月26日




むかし、むかし。ある所にひとりの少年がいました。

彼はあるとき、どこからか不思議な声を聞きました。

『・・・夢を叶えろ・・・』

彼はみんなにそのことを話しましたが、誰も信じてはくれませんでした。

ある人は『夢なんて叶わないよ。叶うわけないよ。』

と嘲笑いました。

しばらくして、少年はまたあの不思議な声を耳にしましたた。

『強くなれば・・・会える・・・』

『!?・・・』

振り返ったけれど、誰もいません。

でも、確かに聞いたのです。

少年は、声を信じて強くなろうと心に決めました。

大人たちは彼をたしなめました。

『夢は夢。現実とは違う。』

悔しくて悔しくて、

悔しくて・・・。

彼は悔しくて泣きながら、独りで強くなる練習をつづけました。

来る日も、来る日も・・。

ある日、彼は一枚の写真を手にいれました。

その写真は神様の家でした。

その神様の所に行けば、強くなれる。

そう聞きました。

海の向こう。オデッサという町。

写真に写っている湖だけが手がかりでした。

その時、またあの声が聞こえたのです。

『行けばわかる・・・。』

青年になったかつての少年は、海を渡ることにしました。

神様に会うために。

その土地は、彼の想像を遥かに超え、広大で、更に手がかりになるはずの湖は無数にありました。

途方に暮れた若者は、あるお店に立ち寄り、そこにいた人たちに写真を見せました。

その中の、ひとりの婦人がその写真を見てびっくりして言いました。

『私の隣の家のおじいさんよ!』

・・・・

若者は神様の弟子にしてもらいました。


彼は神様の元で修行をつみました。


そして彼は祖国に戻り、神様の縁で、その一番弟子の先生の元で、更に修行をかさねました。


それはそれは、厳しくつらい修行でした。

数々の弟子たちが辞めていきました。

でも、彼はあきらめませんでした。

少年の頃に聞いた"あの声”が、どうしても頭から離れなかったのです。

そして彼は強くなり、プロレスラーになりました。


ある日のことです。

デビュー間もない彼が、アントニオ猪木と対戦することになりました。


リングの対角線に立つ、"もうひとりの神様”の髪には白いものが混じり、少年は青年になっていました。

それまでの長い長い道のりが、彼の脳裏をめぐりました。


対戦が終わり、礼をした時、青年は、長い間伝えたかった言葉を、ようやく伝えることができました。


たった一言です。


その言葉を伝えたくて、伝えたくて・・・


世界中を敵にまわしても、伝えたくて・・・。


『猪木さん。ずっとあなたに会いたかったです。』


『そうか。石川クン。 』

肩を抱かれ、答えてくれたその声を聞いて、青年は思い出しました。


そう、その声は、少年の頃に聞いたあの不思議な声だったのです。


涙が溢れ、止まらず、彼は正座して礼をしたまま、ずっと顔をあげられませんでした。


おわり

posted by 石川雄規 at 14:06 | 日記
spacer